妄想物件物語

MACHIYA

物語⑤ Uの場合 京都市左京区高野蓼原プロジェクト 最終話

今回の主人公
U氏 47歳 男性
職業:建築プロデューサー
UNITED ARROWSをこよなく愛す、47歳男性。
横浜在住。未婚だが、生活を共にするパートナーはいる。
最近になって、京都の町家に興味を持ち移住を考えている。

私は現在、関東で建築プロデューサーとして社会と建築家のパイプ役を生業としている47歳の男である。
京都の町家に興味を持ち、拠点を京都に構える計画を実行し、いよいよ完成した我が家を手に入れた。
そしてこれを基にスタートさせる、新しい試み「MACHIYA」プロジェクトの、輝かしい第一歩を踏み出す。

「京都のエスプリ」をこめて

引き渡しの日、空はよく晴れ眩しく輝く玄関に、隣にいるパートナーの瞳もキラキラと潤んでるように感じる。

今回の我が家のポイントとしては、改装前の町家で使われていた素材を分解し再構築することで「MACHIYA」を感じられるように工夫した。そんな中、仕上がった家屋を改めて眺めていると、やっぱりなんといっても外壁の銅板はかなりインパクトがある。どんな経年変化をしていくかこれからが本当に楽しみだ。

「かっこええですね〜」と眩しさに目を細めて、パートナーの幼馴染でもある不動産屋の営業さんが、爽やかに微笑む。私は、わくわくと踊る心をあえて抑え、にっこり微笑み返し、ゆっくりと扉を開ける。

 

1階の床材には、京都産の北山杉の無垢材を使用したので、床材の張り方と塗装にもちょっとしたこだわりを持たせている。部屋の中心には、面発光の幕照明を採用し部屋全体を明るくしたので、天窓から落ちる自然光のような気持ちよさがある。調光で暖色にすると夕焼け、寒色にすると海の中のような雰囲気になる。ちなみに幕照明は、国内の住宅での施工事例が3件目なんじゃないかともっぱらの噂だ。

 

 

また、壁を共有している事で音漏れがしやすい点は、断熱材と石膏ボードの2重張りで緩和を狙い、狭かった奥庭も少し広げ、奥行きを持たせている。ここのこだわりは、隣家との目隠しには153本の箒を設置しているところである。また、玉砂利なのでこれから梅雨の時期に跳ねる雨音も魅力的かな、と。

中間領域を演出し広げることで、壁に窓が少なくとも光や風や水を感じられるようにしている。つまり連棟の weaknessstrength に変えている。

 

 

早速、新しい広めのキッチンで、近所の加茂みたらしをお茶うけに、淹れたての珈琲の香りとを感じながら、ゆっくりと部屋を見渡す。
ここから始まる「MACHIYA」プロジェクトも、もちろん期待していて欲しい。
私自身、出身は関東だが、改めて声を大にして言いたい。

 

「めっちゃええやん!」

 

【fin】