今回の登場人物
N氏 57歳 男性
職業:会社役員
古い車が好きで趣味で1台、普段は足代わりにレンジローバーのディフェンダーにのる。
M美 51歳 女性
職業:テキスタイルデザイナー
移動用にフィアットのパンダにのっている。
レオ:ラブラドール・レトリーバー 2歳 オス
私、Nは30代前半で起業し20周年を迎えた数年前に一線を退き、株式を売却した今は相談役についている。そしてその売却で得た資金で、新しい会社に投資なども行っている。
現在のパートナーであるM美は、以前京都の大手テキスタイル会社にデザイナーとして勤めていたが、今は独立し、今年で7年目になる。
各々家庭を持っていたが、それぞれ訳あって離婚しておりバツイチ同士。
お互いの子供も独立し、ゆったりとしたセカンドライフを求めて新居を模索中。
犬と車と私(達)の物語が今、始まる―――。
MACHIYAシリーズ第2弾
〜犬とマイカーと私(達)〜
M美とは共通の友人を通して知り合い、車好きと犬好きが高じて交際に至る。横浜と京都の遠距離ながらも、ゆっくりと仲を深めていった。お互い子供もいるがみな成人し、各々家庭を持ったり独立したので、これから私達(人間二人と犬のレオと車)で新たにゆったりした生活を求め、長年住んでいた関東より彼女のいる京都市内に引っ越しすることにした。
第一希望としては、M美の分も含め車を3台所有している為、屋根付きのガレージが欲しい。京都市内中心部で色々探したが、ガレージは1台3万円以上するのと、“屋根付き”と言う物件がほとんどない。それに加え、犬と暮らせる場所を求めるも、京都市内ではペットが飼えるマンションは、最近の京都市内における価格の高騰で、これからの事を考えるとなかなか手が出ない。
そんな時、最近京都へ移住した知人の紹介で出会ったのが、このテラスハウス。RC(鉄筋コンクリート)の建物である。古いところ(築50年)が自分たちとなんとなくリンクし親近感が湧いた。早々に内見の日取りを設定し、現地へと足を運ぶ。
見たところ庭がとても広い。今まで紹介してもらった中でダントツである。ライオンの石像もつい置きたくもなる。何より日当たりもいい。これなら洗濯物も干し放題&乾き放題だ。さらにガレージに関しては、ちょっとしたお店の駐車場ぐらいある。これなら息子達家族のゴリゴリなハイエースが数台停まろうとも困ることはないだろう。
そして、立地的に自然が多いが田舎過ぎない所がちょうど良い。お互い車で移動するので、市内へ25分程の距離でいける岩倉は全く苦にならない。内見の日はちょうど天気が良く、リビングの窓を開け放すと、広い庭と室内をリードなしでチャッチャッチャと軽快に足音を鳴らし、自由にレオが行き来している。庭木も室内から見え、ゆったりした時間が流れた。
「「うん、良いね!」」
第一声が被り、ビックリして互いに顔を見合わせたので、年甲斐もなく少し照れ臭くなり、思わず笑ってしまった。
明確な言葉を交わす事なく、まるで長年連れ添った夫婦の様に、情意投合したのが2人には分かった。
レオの方を見ると、待ってました!と言わんばかりに舌を出し、尻尾をゆっくりと振りながら「ワン!」と快く同意してくれた(と思う、知らないけど)。
―――よし、ここにしよう!